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中庭の木の下。どうしてもやるせなくて顔を膝に埋めた。涙が止まらないし。汚い感情ばっかりが私のことを支配している。みんな消えてなくなってしまえばいい。明日なんていらないから、確かに印象に残る今日がほしい。たとえば今の私は3日前の今日で止まっている。ビルから告白された日以外の色が分からない。昨日の夜ご飯だとかスネイプ先生の嫌味だとかくだらないけれど今までの私を構成していた確かなものがひとつもわからなくなってしまった。(チャーリーとローズから色を貰っていた世界はとっくの昔に機能するのをやめていた。) 「どうしたんだい?お嬢さん。」 「・・・ビル。」 急いで涙を拭いて反射的に顔を上げた。(きっと彼にはわかってしまっている。) 「俺は、好きな子がそんな顔してたら自分まで悲しくなっちゃうな。」 「・・・ありがとう。」 ビルのおどけたような顔を見ると、いつも不思議と安心できた。どんなに消えてなくなりたいと思った夜でも、ビルが隣にいるだけで不思議と安心できて・・・あぁそうか。彼は日本に居る私のお兄ちゃんにひどく似ているんだ。 「何かあった?」 「何もない。ただ、星が綺麗だと思ってこんなところまで来ちゃった。」 「そっか。・・・でも、今日曇ってるんだけど?」 「ですよねー。」 「おぅ。」 「明日から空気だー。」 「うん?」 「ローズは私の前からいなくなりました。」 「喧嘩?」 「ううん。私がポイされちゃったの。」 「はこんなに可愛いのにね。」 「いや、ローズ女だし。」 結局、彼に隠し事なんて出来ないのだ。彼の前での私は酷く幼くなってしまって1から10までを彼に知っていてもらわないと気がすまない。私が思ってる自分の嫌いなところも彼に知っていてもらわないと落ち着かないし。だから結局最後にはすべてを吐き出してしまうのだ。 「ねぇ。」 「何だい?」 「ビルには悪いんだけどお宅の弟も空気になっちゃったわ。」 「それはパースだったら少し困るかな。木偶の坊みたいな奴なら構わないけど。」 「ふっ・・・大丈夫、木偶の坊の方だから。」 「なら安心だ。」 ふたり声に出して笑った。胸のモヤモヤが少し晴れたような気がした。きっと明日からチャーリーとこんな風に笑うことなんて出来ないだろうし胸が張り裂けそうに痛いけれど私はそれを必死で無視している。これでいいんだ。ずっと前にチャーリーはローズの特別になったのだし、ローズだってさっきはあんな風に取り乱していたけれどきっとチャーリーのことをとても好いている。私のこの思いが消えれば全てが丸く収まる。それだって、もうそんなに長くはかからないだろう。その証拠にビルの笑顔を見ていると胸の痛みが少し遠のいた。 「なぁ。」 ビルの目が急に真剣になったと思ったら、それは一瞬だった。唇に何かが当たって。私はそれが何か認識出来るまで意識を遠くへ飛ばしてしまっていた。我に返ったときには既にビルの顔が遠くなっていて口角を持ち上げてしてやったり顔をしているビルがそこにいた。 「キス・・・」 「うん。キス。」 「初めてだった。」 「本当に?」 「本当よ。」 「?どうしたの?」 何が、声に出そうとしたら嗚咽に邪魔された。 「何で・・もなっ・・い。」 「ごめん。嫌だったか?」 「ちがっ、」 違う違う違う。ビルからのキスが嫌なわけない。私の彼氏はビルでそれからビルはお兄ちゃんじゃない。私はこの人の手をとって歩いていくと決めたのだしこの人は私を幸せにするって言った。だから私は今、この上なく幸せだしビルも幸せに思ってくれているのならそれもまた幸せなのだ。 「やっぱりローズに捨てられたのがキツかったのかも。」 「そっか。・・・談話室に帰ろう。」 「うん。」 握り返した手が温かくて。気を抜けばまた、止まった涙が溢れてしまいそうだった。私の今日が3日前からやっと動いたような気がした。 (ビル兄、大好きです。← 慰められたぃぃいいい! あと5話前後でこの連載終われたらいいなと思います。これが終わったらべらぼうに長い親世代学生編から続く原作沿い(7割)をやりたいです。) (20080424) ←Top Next→ |