めっちゃモヤモヤする。というのも、3年目の片思いにいい加減区切りをつけたい私がおるから。







四天宝寺中、男子テニス部の白石蔵ノ介といえば、校内に名前を知らん人はおらん。そればかりか、校外の中学生ですら白石と喋ったことは無くても、名前と顔は一致するなんて人の数が少なくないんやから性質が悪い。
まぁ、難点をひとつ上げるとすれば、テニスの試合中に時折、発せられる台詞やけど、それはまぁ、あばたもえくぼっちゅうことでヤツに恋しとる女の子の数は半端ない。
ちっさいときから、人と同じものやことが好きやなかった私は、中学に入った当初、白石のことなんか好きになるもんかって必死で自分の気持ちをごまかしとった。同じクラスにおる女子20人中10人は白石を好きという事実があって、やからマイノリティを愛する私が白石を好きになることはないと思っとった。
それが、何の因果か白石と同じ保健委員になって、白石と接していくうちにそんな自分の中の決まりごとみたいなのを破ってしまっとる自分がおった。まぁ、認めるまでが大変やったわけやけど、1度認めてしまえばあとはどんどん白石のことが好きになっていっとった。






でも私は、好きって認めたからといって、告白するわけでもなく2年生になり、気付いたら最高学年である3年生になっていた。その間に白石に彼女が出来たっていう噂は聞いたことなかったし、本人も数あった噂を否定してたから彼女はおらんかったんやと思う。
1年生から3年生になるまでの間に私の仕事は保健委員から放送委員にかわって白石との共通点はひとつ減った。それが何故かというと、私は昼休みに自分の好きな曲をかけて自分の好きなバンドをみんなに普及したかったからなんやけど。






、なんやお前、まだおったんか。」
「忍足やん。」





夕暮れの教室でひとり黄昏ていた私の思考をぶった切りしたこの男の名前は忍足謙也や。最初は忍足のこと『コイツ頭大丈夫かいな?』的な思考で見てた私やけど(頭の色的な意味で)放送委員を一緒にしているうちに『コイツは音楽が分かるやつやで!』という認識に変わって行った。
とにかく忍足とは音楽の趣味が合う。どれぐらい合うかというと今の私の企みが『近いうちに忍足の家に行って良さそうなCDを借りる』であるほどや。





、もしや暇人なんかー?」
「ちゃうわ。忘れ物!忘れ物とりに来ただけやねん。」
「ほうか。ま、俺もなんやけどな。」





そう言うと忍足は苦笑いしながら自分の引きだしに入っている数学のプリントを抜いた。それは今日の2限に数学の教師が宿題として出した代物で、今日、宿題にしたにも関わらず、明日の5限目にある数学の時間に提出させられるという滅茶苦茶なプリントやった。




、もう帰るんかー?」
「うん。」
「ほなら、一緒に帰らへん?」
「えぇよ。」





忍足がここにおるっちゅうことは男子テニス部はもう着替えも終わって帰路についてしまっとるっちゅうことやし、それは私のモヤモヤが今年も続行することを意味しとる。つまり、教室でちゃっかり数学のプリントを終わらせたり英語の予習をしたりしてどうしようかとウジウジしとるうちにテニス部の部活時間がいつの間にか過ぎ、最終下刻時間もちゃっかり過ぎてしまっとったっちゅうわけや。
そうなってしまった私がとる行動はひとつ。忍足の家に行き、良さそうなCDを借りることである。そのためには了承を得やなアカン。いくら30分ぐらいのことやとはいえ、今の時間は世間一般的には夕食時なのである。それはまた私の家も然り。昇降口でローファーに足を突っ込んで、口を開きかけた時やった。




「謙也。プリントあったんか?」
「おう、あったで。」





一瞬、思考回路がショートした。なんで、目の前に白石がおんの。





「え、?こんな時間まで何やっとったんやー?」
「あ、あぁ。ちょっと忘れ物してしもて。」
「教室行ったらたまたまがおったねん。外も暗くなりかけやしも一緒に帰ってえぇやろ。」
「えぇよ。」





3人で道を歩く。それはめっちゃ奇妙な光景に見えた。忍足にはGJとしか言いようがない。せやけど、私が男子ふたりの会話に入れるか否かというとそれは否でさっきから忍足と白石が喋っとる横でぼーっとしながら歩いとるだけの私がおる。





「結局、まったく喋ってへんかったなぁ。まぁえぇわ、ほななー。」
「あぁ、またな。」
「ばいばい。」



忍足は言うだけ言うと曲がり角を曲がって行ってしまった。今、思い出したことやけど、私と白石の家は同じ方向にある。白石の家よりももうちょっと行ったところに私の家があるんや。





ん家まで送るわ。」




頭には全然、入ってこんわりに忍足と別れてから何とか白石と会話を続けとった私やけど、白石の言った一言で頭が完全に覚醒した。




「え、お気づかいなく。」
「阿呆。」



そう言うと白石は自分の家に入らずに私の家の方向に歩き始めた。我に返った私も遅れまいと後を追いかける。





「お世話になります。」
「素直でよろしい。あのまま断られとったら俺、傷ついとったわー。」
「嘘ばっかり。白石は私に何かされたからって傷つくような人ちゃうやろ。」





白石が私のしたことに対して傷つくなんてありえへん。そうなればえぇのに、っていう私の希望はあるわけやけど、2年と少しのあいだ微妙な距離で接してきた女子に何かされたからって白石が傷つくわけないんや。





「いやいやいや、実際俺2年の2学期に俺めっちゃ傷ついてんけど。」
「は?」
「自分、放送委員になったやん。何でなん?おまけに謙也とえろう仲良うなっとるし。」






目の前の人が話しとる言葉が異国の言葉のように聞こえた。やって、それって、つまりはやきもち?白石は私のことが、その、好きっていうことなん?






「え?え?白石?」
「今日、ほんまは昇降口でんこと待ってたんやって言うたらはなんて言うてくれるん?」
「え?え?」





白石の顔が真剣でこれが冗談なんやとしたら、私は白石に主演男優賞をおくりたい。それぐらい白石の顔は真剣やった。せやけど、それが意味しとるのは私が1番望んでいたことで、つまり白石も私のことが好きやって。そこまで考えたら頭がぐちゃぐちゃになって目の前が滲んだ。




「すまん!泣くほど嫌やったんか。せやけど、嫌なんやったらそんな男とふたりで帰ったらアカ「違う!!!」




自分で思っていたよりも大きい声が出て、私たちを照らしていた月も白石の動作も私の動作もすべてが一瞬とまった。




「違うって・・・・・・
「すき」




数十秒のように感じた一瞬の中で色んなことが頭を駆け巡ったけど、どれも言葉にならんくて、口から出たのはたったの2文字だけやった。それでも、私の言いたかったことは白石に伝わったらしく、白石の形のいい瞳が普段よりも大きく開かれた。








「・・・・・・俺も好きや。」






言い終わった後で『先言われてしもたな。カッコ悪。』って言いながら項垂れる白石もすごく格好良く見えて、そんな私は今、誰が何と言おうと世界で1番の幸せ者なんやと思う。




Moonlight stepper
(I'm still here under the moon waiting for you.)






白石くんハッピーバースデイ!!!!!!
すっごくギリギリですが何とか間に合いました。(ただ今4/14の23時前)
白石くんは四天で一番最初に好きになった人です。いやー、いつもトキメキをありがとう。

このお話のお供にはぜひthe band apartの『Moonlight stepper』をどうぞ。
バンアパはやっぱり最高ですね5/15にライブ行きます←
なんて管理人の予定はどうでもいいですが。

いやー、とにかくめでたい!15歳おめでとう。



※引用:◆the band apart 『Moonlight stepper』


(20110414)