ドリーム小説





寂しくて寂しくて誰かの手が恋しくてしゃあない。







結局あの後、小春ちゃんとは見事にあのパフェを食べきった。まさか本当にやるって思ってなかったあたしと蔵ノ介はただただ苦笑するばかりで。(はあたしらの表情を見て何か言いたげやった。)それから蔵ノ介の愛車(ブリジストンのえぇ自転車やってさ。)の後ろに跨って家の前でバイバイ。そこまでは良かった。あたしはすっかり忘れてしもとって、それがアカンかったんやと思う。いつも通りで幸せやったから、今日があの年に何回かやってくる夜が怖くて怖くて堪らん夜やって気付かんかった。外はえぇ感じの星空やのにそれすらも怖い。まるであたしらを飲み込んでしまって今、目の前にある幸せが『全部嘘やねんで。』って言われてしまいそうでとてつもなく怖い。こんな夜はカーテンも窓も開けっ放しにして風と街灯の灯かりを取り入れる。街灯の多い街に住んどって良かった。この時だけは本気でそう思う。そのせいで星が見えにくくなったんはほんまにごめんなさいって感じやけど怖くて怖くてたまらんからちょっとだけ見逃して。






「ねむれーねむれー自分ねむれー」






ひとりごともやけにむなしい。夜のことは好きやのにそれでも年に数回だけどうしてもそれに反発したくなる日がくる。今にも歌い出せそうやのにどうしてもダメや。それでも、部屋の電気は付けへん。・・・電気代が無駄やから。(こんなえぇ娘を持ってお母さんとお父さんは幸せやろ?)




「何やっとんのやー?アホ。」





むかつくはずやのに、少なくとも放課後はそれに苛立ったはずやのに謙也の声に安心したなんて恥ずかしくて言えるわけがない。



「アホちゃいますーですぅー」
「おーおーそんなにほっぺた膨らませて餅やな!お前は餅で決まりやー」
「アホの次は餅?!ほんまからかわんとってや。」
「ちょ、ほんま、お前その顔、餅やん!笑かすなって!」





ムカつくわほんま。ちょっとは慰めてくれるんかと思ったらコレや。昔みたいに「大丈夫や。」なんて言いながら横におってくれたらえぇのになんて期待したあたしがアホやったわ。(そういえば、手も握ってくれとったような・・・まぁ、この年になってそれはないか。)






「お前、今日、俺のことシカトしたやろー?」
「してへんよ。気付いたら謙也がおらんくなっとったんやろー?」
「ちゃうわ。気ぃ利かせたったんや。お前、白石んこと好きやろ?」






唐突にほんま唐突に謙也が尋ねてきた。びっくりして声も出やん。あたしが蔵ノ介を好き?それも特別な意味で?・・・・ないわ。確かに蔵ノ介はえぇ奴やし中学3年間は蔵ノ介と愛車にとてつもなくお世話になったけれどもうん、ない。そういう好きはまだよく分からん。





「好きっちゃうわ!いや、確かに好きやけど断じてそういう好きではない。」
「ほんま?!俺はてっきりお前が白石んこと・・・
「何、嬉しそうな顔しとんの?」
「アホ。何も嬉しないわ。」
「またまたー、ほんまは嬉しいくせに!」
「嬉しないって。あーあー俺、もうそろそろ寝よかなぁ。」
「アカン!それはアカン!」




気付いた時には精いっぱい謙也を引きとめた後で。





「嘘!今の嘘!寝てもえぇよ。明日も早いし、うん。」
「・・・お前は正真正銘のアホやな。」




人がせっかく安眠を取ってもえぇよって言うたのに何もアホっていうことないやん。




「俺は泣きそうな顔しとる奴ほっとけるほど優しない人間とちゃうんや。」
「・・・は?」
「久々やな。の『夜恐怖症』。」
「気付いとったん?」
「当たり前。何年お前の幼なじみやっとると思っとんねん。」





意外やった。九州からこっちに戻ってきてから1回も謙也の前でこの症状を出したことなかったのに。あたしは、こっちに戻ってきてからその日が来るとの家でお世話になっとった。と小春ちゃんとたまに蔵ノ介が小春ちゃんの家に泊まって一緒に楽しく過ごして。は唯一あたしのこの厄介な病気(うん、ここまで来たらもう病気やろ。)を知っとって朝が来るまで隣におってくれた。やから、自分の家でこんなに夜に押しつぶされそうになったんはめっちゃ久々やし、謙也はもうあたしのこの病気をすっかり忘れとんのやと思っとった。(さっきからからかわれっぱなしやし。)



「手、貸してみ。」
「なんよ?」




少し訝しげに手を差し出す。何をされるか分からへん。またからかわれるんかも知れん。





「お前の怖いのがなくなるまでしゃあないからこうしといたるわ。」





だいぶびっくりした。あたしが訝しげに差し出した手は何をされるわけでもなく謙也の手としっかり繋がれとるんやから。




「・・・ありがとう。」
「どういたしましてアホ。」






今日は一体どんな日なんやろ。謙也が全体的に優しすぎる。しかも、何ヶ月かぶりに名前を呼んでくれた。(まだアホは付いたままやけど。)





「やっと思い出してくれたん?アホはいらんけど。」
「アホ、俺の記憶力はめっちゃすごいっちゅーねん。」
「はいはい、そうやなー。・・・あ、あたし、軽音やることにしたんよ。謙也が教えてくれたギター。」






昔みたいに言葉がするすると出てくる。意地の張り合いじゃなくてちゃんとした会話で。






「そうか。早よ上手なれよ。」
「言われやんでもなるわ。」
「お、何やその言い草はー。折角、謙也くんのドラムと合わしてやろうおもたのに。」
「キャー、ごめんなさいー、また聞かせてくださいー」
「しゃあないなー。」





あたしと謙也の笑い声だけが静まり返った星空の下で響く。大嫌いな日の夜が少し好きになれそうやと思った。



(謙也くん好きだなぁ。ということで名前を呼ばせてみました。本誌登場は終わったし連載も終わってしまったけれどそれでもずっと謙也くんをはじめ四天メンバーを好きなんだろうなと思います。ということでこの連載をあたしと同じような心境の方(愛の対象が他校に行ってても◎)に応援していただければさらに嬉しく思います。)



(20080310)


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