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じょぼじょぼじょぼ。 気付いた時には真っ白な液体が私の腕を伝ってローブを染めた後だった。鼻につく臭いが私のまわりに充満して隣に座っている友達はびっくりしたような顔してこっちを見た。(だけどもそれを拭おうとしてはくれない。薄情な奴らめ。) 「!アンタ、牛乳!こぼれてるわよ。」 「はいはい、ご忠告どうも。」 にっこり笑顔をひとつよこして焦ったように杖を振ったけれど内心、安堵していた。ささるようなざわめきが止んだから。私に遠慮するかのように囁かれていたひそひそも止んで彼女たちは今日の時間割についてあれこれ雑談している。先月までは少なくとも私の恋を応援してくれていた。女子寮のベッドのカーテンを2時や3時まであけたまま彼女たちと、あぁでもない、こうでもないと色んなことを憶測してはそれで満足していた。彼のことをもう少し深く知ったあとは私はその中には入らずに毎晩、早々にカーテンを閉めて自己の世界に沈むのが好きだった。(友達が聞いてあきれる。) 「、貴方ジェームズのことが好きだったじゃない?」 「えぇ、そうね。」 「だから、今回のこと、とても残念だと思うわ。」 私に何を求めているのか分からないんだけど、同情ならいらないわよ。そんなの空腹の足しにもならないわ。私は彼が好きだったけれど、それを後悔していないしあの頃の思想を消したいなんてこれっぽっちも思わない。だから胃がキリキリ痛むのは気のせいであって私の勘違い。 「来たわよ!」 隣で誰かが興奮気味に言ったからつい、つられて扉の方を見てしまった。顔を上げた瞬間、目に入ったのはあの人の満面の笑みとあの子の燃えるような赤毛。あぁ、何で顔を上げてしまったのだろう。私は、私は、あんなの見たくなかったのに。何のためにいつもより30分も早く談話室を出たのだろう。あの人とあの子を見ないためだったって言ったらリーマスは笑うかしら。・・・嗚呼、誰か本当に私を蔑んだらいいのに。 「!先に行っちゃうなんてひどいじゃない!」 「本当、記念すべき日だっていうのに!」 あの人のふざけた調子に、とてもとても気分が悪くなって、あの子の何も知らないような純真無垢な瞳にイラついた。私は私は本当にふざけた神経をしている。あぁ、私ってばこの男が好きだったんだ。こんな風に先週抱いた女に本命を紹介出来るようなデリカシー0男が。あの夜の私は全部、嘘であってあなたに抱かれた私はニセモノですって満面の笑みで叩きつけてやれたらどんなにスッキリするだろうか。出来もしない未来を思い浮かべてはため息がこぼれる。嬌声にまみれた夜もこの人の瞳もすべて忘れてしまいたい。 「リーマスは?」 「あぁ、彼は具合が優れなくてね。朝食は摂らないそうだよ。」 「そう。」 「おや、はリーマスがそんなに心配かい?」 「そういうことじゃないわ。ただ今日はいつもより猫が静かだから。」 「猫?君、猫を飼っていたかな?」 「私のじゃないわ。馬鹿な親がきちんと躾けられなかったバカ猫よ。」 「あぁ、そういうことね。」 私は何でこの男と言葉を交わしているんだろう。リリーは私とジェームズが話していたって気にも留めない。ごめんなさい私、先週この男に抱かれたばかりよ。なんて言ってしまったら彼女はジェームズのことを振るんだろうか。それとも、それを知った上で彼の隣に並んでいるのだろうか。分からないけれど、彼女の純真な瞳がムカつくから今すぐ奪ってやりたくなる。 「、今日は1限目から薬学じゃない?」 「!?・・・え、うん。」 あまりにも思考がトリップしすぎていて反応が幾分か遅れてしまった。 「それで、ペアなんだけどね、私、その、」 頬を上気させて言いにくそうにしているリリーが、彼女のこの態度が、私にどれ程のショックを与えるかなんて彼女はきっと知らない。彼女のそれはとても可愛らしいから、私はそれを責め立てるような気にはなれないし責め立てたところで隣に立っているこの男が黙っちゃいないだろう。(彼はきっといつでも彼女の見方になる。) 「いいわ。ジェームズと組むんでしょ?」 「そうなの。・・・本当にごめんなさい。」 「そんなの、彼氏と彼女なんだから当たり前じゃない。」 「彼氏」と「彼女」の箇所を声を掠れさせずにきちんと発音することが出来ただろうか。私の笑顔は引き攣っていないだろうか。今この場に開心術の出来る人間がいなくて良かったって心の底から本気でそう思う。 (もう嘲笑しか出てこないんじゃない?) (ひねくれてるヒロインと真っ黒ジェームズと天然兵器のリリー。リリーの破壊力はすさまじい。苦笑 無知は時として罪にもなり得ますよね。) (20081113) ←Top Next→ |