ドリーム小説





先生はずるい。」





肌寒い朝やった。あたしが、ここに赴任してきて4ヶ月。朝練で怪我したらしいバスケ部の3年生の女の子。引退した後やけど後輩の役に少しでも立てたらっていう理由で週に2日ぐらい朝練にだけ顔を出してるらしい。『足、捻ってもうた。』って保健室にやってきたから、椅子に座ってもらって手当てをしてたら、そうやってぽつりぽつりと話してくれた。最初は、他愛もない話をしとっただけやのに、だんだん、その子の語気が強くなっていって最終的に言われたせりふがコレや。





「急にどうしたん?なーんもずるない。ただの保健の先生やろ。」
「ちゃう!先生、オサムちゃんのこと好きやろ!?」
「・・・なぁ、ほんまにどうしたん?」
「あたしもオサムちゃんのこと・・・!」




あたしの気持ちは、中3の女の子に見破られるほど分かりやすかったんやろか。鋭いって言われてる弟の光にでさえバレてない自信があるのに。それとも・・・この子もオサムが好きやからそういうことに敏感なんかな。・・・せやけど、あたしは何も出来へんまま、ここを去ってしまうと思う。だって・・・






「もし、あたしが渡邊先生を好きやったとしても、もうすぐお別れやねん。」
「どういうこと?」
「あたし・・・2学期いっぱいで違う学校に行くことになったんや。」
「嘘!?」
「ほんま。あたしもさっき知ったばっかや。他に誰もこのこと知らへんから誰にも内緒やで。」







そう言うて、人差し指を唇に当てる。目の前の女の子はどんどん涙目になっていって、嬉しいことに、あたしの離任を知って泣こうとしてくれとるようやった。






「先生、そんなん嫌や!今日は先生を責めに来たわけやなくて宣戦布告みたいな感じで・・・!」






目からひとつぶ涙がこぼれ落ちた。ぽろぽろぽろ。何かのタガが外れたかのように彼女の目からは涙がこぼれとる。





「3学期からは今までの先生が戻ってきてくれるんや。自分が泣いてくれるんは教師冥利って感じで嬉してしゃあないんやけどな。」
「ふざけんといて!そんなん・・・あたしは認めへんから!」




彼女は、そう言うと廊下に飛び出して走って行ってしまった。『認めへん』って言うてもうたところで、あたしの離任はもう決定事項なんやろうなと思う。前任の保健の先生は、今の3年生が1年生の頃からこの学校の教師をやっとって、その人が3年生の卒業式を見届けたい思うのは当然のこと。最初から1年の約束でここに赴任することになっとった。それが、半年に縮んだだけ。思ったよりも早く、前任の先生の体調が元に戻ったっていうだけ。分かっとる。分かっとるんやけど気持ちがモヤモヤするのは何で?






あたしがもし、この学校に赴任する話を受けんかったらオサムとまた出会うこともあの女の子にあんな顔させることもなかったんかな。この学校に来てみんなに出会ったこととかオサムに再会できたこと後悔はしたくないし、してないけど何でまたオサムのことを好きになってしもたんやろ。ただの同僚やったら、こんな思いすることもなかったのに。


(久々の更新です。意外と、このお話を読んでくださってる方が多いようなので、とても嬉しく思っています。回を重ねるごとに文章が短くなっていってるような気がしますが、そこは気にしたら負けです。←)



(20100127)


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