ドリーム小説





初めて見た瞬間、この人やって確かに思った。






俺は、未だに本物の恋っちゅうもんをしたことがない。同い年の女の子らは何かが違う。かといって年下の子らも何か違う。告白されてとりあえずってことで付き合ったりとか何回かしたけど、どの子とも長続きせんかった。(たいてい俺が嫌になるねん。)






「おはよう。」
「・・・!?・・おはよう・・・ございます。」





ふいにかけられた挨拶の声で意識を戻して挨拶してくれた人を見た瞬間、俺の心臓が早なってこの人や!って精いっぱい伝えてきた。いや、そんなめっちゃドキドキせんでも痛いぐらい分かるって。えぇ加減静まれ、俺の心臓。その人は俺と目が合うとすごいニコッて音が付きそうなぐらい笑てくれて、すれ違うと甘い匂いがした。(あ、俺この人めっちゃ好きや。)







その人が保健のセンセやいうことを知ったんは、ほんまに偶然やった。オサムに呼ばれて職員室に行ったとき、オサムは煙草吸いにいったんか何か知らんけど俺んこと呼びつけたくせに不在やって、あの給料泥棒が思いながら外に出ようとしたら職員室の入り口に近いところでその人が座っとった。







「あ、こんにちは。」
「・・・こんにちは。」







沈黙。俺も気の利いたことのひとつやふたつ言えたらえぇのに。






「何か職員室に用事あったんちゃうの?」
「え、いや、用事あったんですけどおらんから。」
「あぁ、今の時間は職員会議中やからしゃあないか。」
「え、先生は行かなくていいんですか?」
「あー、あたしは明日から保健の先生やから参加せんでもえぇみたい。」
「そうなんですか。」
「うん。財前っていいます。怪我とかしたら我慢せんと保健室に来るんやで。」
「はい。じゃあ、失礼しました。」







職員室のドアを閉めて廊下で顔の熱を逃がす。あの人には何もバレてませんように。思った以上に心臓が早くなっとって、このあいだの一件は俺の勘違いやなかったって思える。このあいだすれ違ったんなんて一瞬やったから俺の勘違いやったんかもって思っとったけど、さっきので確信した。俺、あの人のこと好きや。









チャンスは意外と早く巡ってきた。謙也との試合中、避け損ねたボールが俺の足に当たってボールの跡がくっきり残ったから。俺は今回は上手くやる自信がある。あんな沈黙作らへん。






「失礼しまーす。」
「あぁ、こんにちは。」
「怪我してしもて。手当てしてもらえますか。」
「うん、えぇよ。ここに座って。」
「・・・はい。」







そう言って指し示されたんは先生のめっちゃ近くにおいてある椅子で、俺は柄にもなく照れてしまった。それでも、それは顔に出さんようにして何気ない顔して先生の前に座る。・・・うわっ、睫毛ながっ。やっぱり甘い匂いがしとって、前まではすごい消毒液!って臭いやった保健室の中までが甘い匂いでいっぱいになっとる。







「先生、何か食べてます?」
「え、あぁミルキーやけど・・・食べる?」
「いいんですか?」
「えぇよ。ひとつやふたつ減ってもまだいっぱいあるし。」
「じゃあ、ひとつもらいます。」
「うん。ストロベリーがオススメ。あたしストロベリーが一番好きやし。」
「じゃあ、俺もそれで。」







先生からもらったミルキーはめっちゃ甘かった。先生は俺の足の様子を見てくれとって俺はその照れから逃げるように 口の中のミルキーに意識を集中させる。また沈黙や。








「オサムは・・・・」
「え?」
「オサムはテニス部の顧問なん?」
「そうですよ。」
「えぇ先生やろね。」







急に出てきたオサムの名前に嫌な予感がした。大体からして、オサムをえぇ先生やっていう先生は少ない。(生徒ウケはえぇけどな。)授業中はさすがにないけど部活時は煙草が手放せへんし、言うとること適当やしコケシとかほんま謎やし。・・・まぁ、それでも俺も嫌いやないけど。








「多分、なかなかえぇ先生やと思います。」
「ほんまに?でも、大事なとこは相変わらず適当なんやろね。」
「よう知ってますね。・・・前から思ってたんですけど先生とオサムってどんな関係なんですか?」







聞いてから後悔。もし答えが俺の恐れとることやったらどうするんやろ。先週初めてすれ違ったばっかりでしかもこの人、オサムと同い年らしいから俺より10も年上やのに恐れとか何とか言うとる俺はイタイ中学生なんかも知れんけど、それでも俺はこの想いが嘘やないと思えるし一目ぼれなんて信じてなかったけど自分が体験してからは考えが変わった。







「うーん。忘れられへん人かなぁ?」
「・・・・そうなんですか。」






ほんまに聞かんだら良かった。それから保健室にはずっと沈黙が流れて俺は何も言葉を発せやんままお礼も言えずに保健室を出た。先生はちょっとしもたって顔しとったけど(多分、生徒の俺に言うつもりやなかったんや。)それも見んかったことにして。先生にもろたミルキーがやけにしょっぱく感じた。・・・俺、何してんねやろ。



(報われない白石くん。バレンタインになんつー話を書いてるんでしょうか。オサム連載なのにオサムが2話連続で出てなくてすいません。財前くんのお姉ちゃんで白石に好かれてるって設定を活かしたくて暴走したらこんなことになってしまいました;;次からはちゃんとオサム出てくると思います。)



(20090214)


←Top  Next→